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2013年8月11日日曜日

子どもをいじめから守る方法

「子どもをいじめるな」(梶山寿子 文春新書)という本を読みました。
 新聞でもテレビでも毎日見かける「いじめ」。
 学校の指導力が問題だとか、心の教育が必要だとか、いろいろな事が言われていますが、著者の指摘はショッキングです。それは「いじめっ子も、いじめられっ子も、親によって作られる」というもの。

■親を見習ういじめっ子
 大人と子どもの体格や知識の差は絶対的です。大人がその気になれば、怒鳴りつけたり叩いたりすることで、一方的に子どもを従わせることが出来てしまいます。不幸にもそうした「家庭内のいじめ」で親によって怒鳴られ殴られ服従させられた子どもは「強い者が弱いものを力で服従させる」という行動様式を学んでしまいます。そのため人間関係で行き詰まると暴力や心理的圧迫を用い、相手を服従させようと考えやすくなります。
 実際、暴力事件を起こした少年にアンケートすると体罰を受けて育ったという回答が一般の年よりも高く出ます。親による暴力が子供の行動パターンに反映するという関係統計で証明されているのです
 暴力を振るう子供は、自分がこれまでにされてきた、あたりまえのことをしているのですから、罪悪感を感じません。それが異常であることを自覚するまでは、反省のしようもないわけです。

■逃げられない「いじめられっ子」
 殴られて育った子供が他の人に同じ事をする。そこまではわかりやすいでしょう。しかしこの本の特筆すべきは、いじめる側だけではなく、いじめられる側にもそうした「家庭内いじめ」の可能性を指摘していることです
 いじめられる子供も、家庭で強い者が弱いものを力で服従させる」行動様式を学んでいるのは同じです。違いは、強い側に立つか、弱い側にってしまうか。
 いじめられる子も、人が人を服従させるのがあたりまえの場所で育っているので、いじめが異常だと感じにくくなっています。いじめられて辛いと感じても「僕がいじめられるのは間違っている」という、もっとも大事なことに気づけません。

 「お前が悪いから殴るのだ」と聞かされて育ったために、いじめられても「自分が悪いのだろう」と感じてしまったり。

 弱いものが逆らうとどうなるかを身にしみて知っているだけに、逃げることも、抵抗することもできません。一方的にいじめられる立場から抜けだせないのです。

 
これは子供のいじめだけではありません。一度被害者の立場に慣れてしまった人は、別の場所でも被害者になりやす傾向があるそうです。この本では、家庭内暴力を受けて育った女性が暴力を振るう男性と結婚し、DVの被害者になるケースが紹介されています。
 暴力的な親を見てきたから暴力はもうたくさんと考えそうなものですよね。でもこうした人は、生まれた時から「強制→従う」の人間関係しか知らず、平等な人間関係での振舞い方を知りません。そのため知っている場所、つまり被害者の位置にもどってしまうようです。
 そこから離れるには、意識的な努力が必要です。

■子供をいじめから守るに
 この本の内容は、自分の体験を通して納得できます。
 もちろん、すべてのいじめの原因が家庭であるとは言いません。差別が関わるいじめは家庭とは関わりない所で起こるでしょうし、文化の違いが原因で起こるいじめもあります。それでも、その根本にあるのは力で人を服従させようとする思想でしょう。
 子供にいじめをさせず、いじめから守る最初の一歩は、親が子供を暴力で服従させないことです。それが、理不尽にいじめられる必要がないことを教え、暴力で人を従わせてはいけないと教える最良の方法です。

 自分が子供を持つようになって、育児書を何冊も読みました。そしてわかったのは、怒鳴ったり叩いたりせず子供を育てられる方法が、いくらでもあるということ。
 今後、そうした本も紹介してゆきたいと思います。