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2015年9月27日日曜日

褒めて伸ばすには、コツがある①

 子供が、宿題や課題をほっぽり出して、ダラダラしているとき。
 つい「さっさとやりなさい!」と大声で叱ってしまいたくなります。言われて、イヤイヤながら机に向かっている背中に「そんなことでは…」とお説教を続けたり。
 もしかしたら、そうした叱り方は、逆効果かもしれません。

 それを教えてくれるのが、この本。
マンガでわかる 魔法のほめ方 PT: 叱らずに子どもを変える最強メソッド (単行本)

 PTは、ペアレントトレーニングの略。ほめることによって子供を伸ばそう、という本です。

「ほめて伸ばすなんて、今まででも言われてきたことでしょ?」
 と言いたくなるのですが、このPTの褒め方はいわゆる「ほめて伸ばす」方式とは根本から違います。

 普通の「ほめて伸ばす」は、ほめて子供の自尊心を高め、やる気を出させることを目的にしています。
 しかしPTではほめること(関わること)を「子供に与える利益」と考えます。子供の行動を観察し、子供が少しでも望ましい行動をしたら、すかさずほめます。良い行動には、利益。それが結びつくことで、目的の行動が増えると考えるのです。


 私が最初にPTの本を読んだのは、もうかなり前のことでした。当時、この方法がなかなかピンとこなかったんですね。
「そんな風に、餌で釣るような方法が、いいのだろうか? 利益のないときに行動しなくなったりしないだろうか?」
 という疑問を持っていました。
 今にして思えばそれは褒めることを「利益で釣って、命令に従わせる」方法だと考えていたからでした。それが変わったのは、PTの元ネタと考えられる本を読んでからです。

うまくやるための強化の原理―飼いネコから配偶者まで

 調教を専門としている人の研究所です。罰に頼ることの不合理、良い行動を「強化」することで教える合理性が、理論建てて説明され、納得させられます。

 イルカにジャンプを教えるときには、イルカを観察します。そして、偶然ジャンプをした時に餌を与えるそうです。それを繰り返すと、イルカはジャンプと餌を結びつけ、餌のために飛ぶことを覚えます。
 次には、繰り返されるジャンプの中から、少し高く飛んだ時にだけ餌を与えます。これを繰り返すと、イルカは高く飛ぶことを覚えます。
 こうして、良い行動と、嬉しいという感情を結び付けることで、より望ましい行動へと誘導してゆく方法です。

 罰という方法を用いないのは、それが「教える」ことには向いていないからです。
 何かを教えているときに罰を与えられると、その行動と罰が、頭のなかで結びついて「教えられる行動=嫌なこと」と感じるようになります。
 結果として、望ましい行動からますます遠ざけるという逆効果です。

 こうした研究成果から、子供向けの内容を取り出したのがPTだと言えます。

ある意味ではドライすぎる方法ですが、実際に読んでいると納得することばかりなんですよね。全体として、子供に不快なことがあるわけでもなく、それで役に立つならいいんじゃないかという気がします。

 ただ、この本の内容を実際に使うには、発送の転換を含めて何段階かの準備が必要です。
 次回は、その準備の話を。