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2014年5月30日金曜日

「親業」⑤ 勝負なし法は、親子で一緒にルール作り

 親の意見と子供の意見が対立した時の方法です。例えば、

・親はお菓子を買いたくないが、子供は買いたい時。
・親は買い物に行きたいが、子供は遊園地に行きたい時。

 意見の対立が、そのまま勝負になることがあります。
 親が「買わない」「買い物」と決めてしまって、子供の意見が通らないのは「親の勝ち」。逆に「買う」「遊園地」と、子供の意見が通るのが「子供の勝ち」。  前回の話ではありませんが、こんなふうにどちらかが勝って、どちらかが負けるという状況は、親子関係にとって、決して良いものではありません。
 親が勝ち続けるのは、親の強権で子供の気持ちを抑圧し続けることになるので、よくありませんよね。
 子供が勝ち続けるのも、何でも思い通りになるというワガママ体験をさせることになって、やっぱりよくありません。
 一番良くないのが、脈絡なく、ある時は勝ってある時は負けるというやり方。どんな時に勝って、どんな時に負けるのかわからない子供は、一貫した自己主張の方法を身につけることが出来ないのです。
 そこで親業が提案しているのは「勝負なし法」という方法。勝ったり負けたりするのではなく、お互いにいくつも案を出し合い、両方が納得の行く方法を探そうとする方法です。
 この方法には、いくつものメリットがあります。
 まず、両方が納得する方法を探すので、お互いに不満が残りません。
 親子でのルールづくりにも有効です。人間は一方的に決められたルールには従わないものです。しかし自分も一緒になって作ったルールは守ろうとするものなので、子供がルールを守る可能性が高くなります。
 
 そして最後にもう一つ、この「両方が納得する話し合いの方法は、社会に出てから役立ちます。従うのでも、従わせるのでもない結論を出すことによって、良い人間関係を築くことが出来るのです。
 こうした、双方が利益を得る関係は「win-winの関係」とも呼ばれており、ビジネスで成功するには不可欠のものとされています。

 具体的な「勝負なし法」の方法は次回に。

 

2014年5月27日火曜日

「親業」4.5 … 子供の味方になるために

 ちょっと親業の話から脱線します。  前回の「わたしメッセージ」で、親は子供の味方、という話をしました。味方であるからこそ、話を聞く気になるし、指示に従う気にもなる。
 親ならだれでも、子供の味方になりたいと思っているでしょう。でも、実際にそれを徹底するには少しコツが入ります。無意識のうちに、子供の敵になっていることが多いからです。  例えば、子供の悪い点を指摘して改善させようとするとき、子供を決めつけてしまう言葉を使うことはありませんか?
「お前みたいな根性なしには無理だよ」
 という感じ。そこまで極端でなくても、
「あんたは算数ができないんだから」
 とか、
「どうせあんたは約束を守らないんでしょ」
 なんてくらいのことは、言ったりしませんか?  こういった決めつけの言葉は、否定語です。
 子供であっても、自分自身を否定する人間を、味方と感じるのは難しいのです。

 親としては「事実を指摘しているだけ」と思っているかもしれませんし、「けなされて、奮起するのを期待している」と考えているかも知れません。
 しかし子供から見れば、素直に「はい」と受け入れられない言葉であることは間違いありません。
 子どもとしては「そんなことない!」とか、「守るよ!」と言い返すことで、反対を表明しなくてはなりません。
 その対立で、一種の敵対関係になるわけですね。
 これが繰り返されると、「関係ないだろ!」と対立から逃げたり、「どうせできないよ!」と負けてかかったりすることも。


 子供の味方になるとは、勝敗を同じくすることです。親が勝つときには、子供も勝つ。子供が勝つ時は、親も勝つ。
 とはいえ、問題点を指摘しないで教えるわけにもいかず…。  それでは、勝敗を同じくしながら、子供の問題点を指摘するにはどうするか。
「フィンランド式キッズスキル」という本に、うまいやり方が書いてあります。  例えば、子供が算数が苦手なとき、
「お前は算数ができないんだから」
 とは言いません。そのかわりに、
「計算の練習をする必要があるね」
 といいます。
「お前は足が遅い」
 ではなく、
「走る練習をしようか」
 と言います。  つまり、問題点を指摘しないで、いきなり解決策を提示するのです。
 私にとっては目からウロコの方法でした。必要なのは子供を伸ばしてやること。その目的さえ達成できるなら、欠点をわざわざ口にする必要はないのです。  この方法も、けっこう便利に使っています。

2014年5月23日金曜日

「親業」④ 「私メッセージ」だと、気持よく伝えられる

 親業、2つ目の柱が「私メッセージ」。私を主語にして、必要なことを伝える方法です。

■あなたメッセージとは?
 私達が子供を叱ったり、何かを要求するときに、つい子供を主語に語ることが多いですね。例えば、


「あんたはまた、散らかして!」
「(あなたは)いつも遅いんだから!」
「うるさい! (あなたは)もっと静かにできないの!」


 とか。こういう「あなた」を主語にした意見の表明を、親業では「あなたメッセージ」といいます。


 親が子供を叱る場合、子供の行動を変えて欲しいわけですから、子供が主語でも不思議ではありません。
 ただ、言われる立場で考えてみましょう。「あなた」を主語にした指摘は、子供の人格を否定し、非難する意味を含みがちです。
 例えば先ほどのケースに言外の意味をつけると、


「あんたはまた、散らかして!(あなたは部屋を散らかす悪い子だ!)」
「いつも帰ってくるのが遅いんだから!(あなたは時間にルーズだ)」
「うるさい! もっと静かにできないの!(あなたは落ち着きが無い)」


 ということになるでしょうか。
 親の言うことが正しいとしても、面と向かって否定されながら、その指示に素直に従う気にはなかなかならないもの。


 前回の「能動的な聞き方」でもそうでしたが、親業の目的は信頼関係を作ることにあります。親は子供の問題点を指摘しつつ、敵に回らないようにしなくてはいけません。

■わたしメッセージとは?
 そこで親業が使うのが「わたしメッセージ」です。
「わたしメッセージ」とは、「私」主語にした語りかけです。先ほどの三つの会話を、わたしメッセージに言い換えると


「部屋が散らかっていると、転びそうで(私は)怖いんだけど」
「遅くなると、(私は)心配しながら待つことになるのが嫌なの」
「大きい声で話されると、お父さんとお母さんの会話ができなくて困るの」


 となります。
この言い方でも、子供の行動を問題にしているところは同じです。しかし、子供を否定する言葉が入っていないので、反感を持ちにくくなります。
 また行動が私(親)にとってどういう影響があるのかを伝えることで、子供に行動の意味を考えさせることもできますので、しつけにもなります。
 もちろん、子供が理由などを話そうとしたら「能動的な聞き方」に切り替えることを忘れずに。

■使ってみた感想ですが
 正式な方法では、上述のように「私はどう感じるか」「私がどう困るか」を伝えるだけで、具体的な指示はしません。

 ただ、私は短気なのでつい、
「転びそうで怖いから片付けて」
「大きい声で話されると、会話できないから小さい声で話して」
と、指示を入れてしまうことが多いです。


 それでも、「あなたメッセージ」で話をしてしまった時と比べれば、話の通りは格段に良いと感じます。

 親は子供の敵ではなく、味方。信用されることで、コミュニケーションが楽になるのです。

2014年5月19日月曜日

「親業」③…能動的な聞き方のコツ

 「親業②能動的な聞き方って?」はこちら

 能動的な聞き方の方法をまとめると、
①オウム返し
②まとめて返し
③気持ちを汲む


 となります。では1つずつ解説。


①オウム返し
 「こんにちは」
 と言われたら、
 「コンニチワ」
 と返す。これだけです。


 例えば子供が
「今日、学校で先生に怒られた」
 と言ったら
「怒られたの」
 と返す。子供の言葉、とくに語尾を繰り返すだけなので、とても簡単。
 繰り返すことで、子供の話を聞いていることが伝わりますし、「なんで!」などと非難されないことで、話しやすい空気ができます。
 続けて話が出てくる効果はびっくりするほど。


②まとめて返し


 オウム返しは簡単な割に有効な方法なのですが、そればかり使っていては、会話が成立しません。たとえば
「学校で怒られたんだ」
「そう、怒られたの」
「給食の時間に前の子と話していたら、うるさいって」
「給食の時間に話してたらうるさいっていわれたのね」
 この時点で「ナメてんのか」という感じになること請け合い(笑)


 そこで必要に応じて言葉数を減らしていきます。ただし繰り返すことと、批判・非難しないという原則はそのまま。


「そう、しゃべってて怒られたんだ」


 これなら、会話として自然ですね。
 この方法にはもうひとつメリットがあります。子供は話をするときに、きちんとまとめることが苦手です。体験したことの中で、どの部分が重要なのか、大人が整理してやることで、問題点を自覚できたりします。

 話の要点をまとめるのは、大人の脳トレとしても有効!


③気持ちをくむ
 ここまでの二つは、事実を把握して、聞いているということを示しているに過ぎません。しかし、人間が本当に理解されたと思うのは、どんな気持ちだったかを理解される瞬間ではないでしょうか。
 ということで、子供の話を聞きながら、そのときの子供の気持ちをくみとって、代弁してやります。


「今日学校で怒られたの。給食の時間に前の子と話してたらね、うるさいって」
「そう、それはびっくりしたねえ」


 子供によってどんな感情を持つかは異なります。表情を見ながら、どんなことを考えているかを読み取って対応します。ただし「怖いことなんか無いでしょう!」とか「楽しかったんでしょ!」とかの押し付けにはならないようにします。

以上、三つの原則が「能動的な聞き方」の基本です。

■せめて最後まで話を聞く!
 実際のところ、いつも本に書いてあるように調子よく会話が進むわけではありませんし、すぐに解決に結びつくことも少ないです。

 しかし話を聞くことを続けるうち、子供との信頼関係が強くなるのは確かです。誰でも、話をきちんと聞いてくれる人は信頼しますし、その人の話も聞こうと思うものです。
 「能動的な聞き方」は、問題の起きたときに使うのではなく、毎日積み重ねて信頼を強固にするツールだと考えるのが妥当でしょう。


 もし、この3つの方法がめんどうだと思ったら、せめて
「子供の話を遮らずに聞く。最後まで聞いてから、こちらの話をする」
 ことを心がけるだけでも、信頼関係は良くなります。信頼するほど、こちらの話もよく聞いてくれます。

 まあ、根気はいりますし、時間もかかりますけどね。言葉を覚えてくればくるほど、長くなるのがまた…。
 小学生の本気しゃべりって、長いです…。

2014年5月13日火曜日

「親業」②…能動的な聞き方は、上手く聞く技術

 いきなり「親業」から話はズレますが、「七つの習慣」という本に、こんなお父さんが出てきます。

「最近、息子が何を考えているか、ちっともわからないんですよ。なんせ息子は私の話をちっとも聞かないものですから」
 著者のコヴィーは、
「息子さんが話を聞かないから、息子さんを理解できないんですか? 息子さんを理解するには、まず彼の話を聞かなければならないのでは?」
 と言うのですが、彼は
「理解はしてるんです。理解できないのは、なぜ私の話を聞かないのかということで…」


 まるで笑い話ですが、それが笑えないくらい、私達は、子供に一方的に話をすることに慣れてしまっています。
「理解するためには、相手の話を聞かなければならない」
 それを方法としてまとめたのが「能動的な聞き方」です。

 「能動的な聞き方」の原則は、批判や評価をせず、子供の話を徹底的に聞くこと。
 例えば、子供が家に帰ってきて「塾をやめたい」と言ったとします。ここで

「なにワガママ言ってるの!」(批判)

 というと「売り言葉に買い言葉」のケンカモードに入ってしまいます。ケンカになったら、勝つために適当な事でも何でもいいたくなるのが人情。これでは本当の原因を理解することが出来ません。

 こうした非難だけでなく、私達が子供に向かって使う言葉は、子供の思考を止め、発言を封じてしまう言葉に満ちています。塾の例で言えば、

「そんなことを言わないで、続けるほうがためになるよ」(説得)

「今やめたら、後悔するよ」(強迫)

「参考書を買って自分で勉強するか」(提案)

 なども、子供の話を打ち切り、建設的な会話ができなくなるという点では同じです。

 では、親業ではどうするか。まずは子供の言ったことを確認するように
「そう、やめたくなったの」
 と返します。確認するだけで、それ以上のことはせず、子供の言葉を待ちます。子供の言うことを理解した、聞く態度だ、ということを伝えて、話せる空気を作っているのです。

「うん、だって怖いんだもん」
「え、怖いことがあるの?」
「実はエレベーターで変な人が…」
(この例は「ステキなお母さんになる簡単な三つの方法」に出てくる実話エピソードをアレンジしました)

 子供が思ったことを全部話せると、親は子供をほんとうに理解し、一緒に考えてやることができます。
 また子供自身も、話すことで自分の考えがまとまってきます。場合によっては親が聞いているだけで、自分で解決策を見いだすこともあります。

 この「能動的な聞き方」、家庭の外ではすでに使われています。それはカウンセリングの現場。
 カウンセリングでは「積極的傾聴」と言われていますが、評価も助言もせず、徹底して聞くのは同じです。

 人は、批判も助言もされず、理解されていると感じると、たくさん話すことができます。話すことを通じて自分自身の考えをまとめ、成長することができるのです。
 カウンセリングで有効性の確認された方法を、家庭に持ち込んだのが「親業」の「能動的な聞き方」だといえます。

 次回は、能動的な聞き方についての具体的な方法などを。→「能動的な聞き方のコツ」


付記
 冒頭で触れましたが、名著として有名な「七つの習慣」でも、「理解してから理解される」という章で、同様の聞き方を紹介しています。
 この方法が社会で広く使えると言うことを示していると言えるでしょう。


親業―子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方

 完訳 7つの習慣 人格主義の回復

2014年5月8日木曜日

「親業」①…親業は便利で簡単なコミュニケーション

  楽な子育てということで、モンテッソーリ教育以外におすすめしたい本は、「親業―子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方 」です。
 「親業」は、アメリカのトマス・ゴードン博士によってまとめられた子供との接し方の本です。子育てというよりは、子どもと良好なコミュニケーションを保ちつつ、社会的なスキルを身に付けさせるものです。

 子供とのコミュニケーションについて書いた本はたくさんあります。多くの本で、心理学に基づいた関わり方が解説されていて、どれもそれなりに参考になります。
 その中で、あえてこの「親業」を選ぶのは、内容がわずか三つの原則にまとめられていることです。個別のケースを覚えているのではなく、この三つの原則だけ覚えていればいいので、思い出すのが簡単。なんでもそうですが、すぐに思い出せるものだけが使えるものですから。

 その原則は、以下の三つ。

①能動的な聞き方
 子供の話の聞き方。聞くことによって子供を理解するだけではなく、子供の頭を整理させ成長に導きます。

②わたしメッセージ
 非難したり、叱りつけるのではなく、子供の行動を変えるために必要なことを伝える方法。

③勝負なし法
 一方的に子供に命令するのではなく、子供のワガママに流されるのでもない、ルールの作り方。

 このルール、大人同士のコミュニケーションにも十分に使える方法です。単に子供をしつけるだけではなく、この方法を見て育った子供が、大人になって社会に出てからも役立つという、優れた方法です。

 次回から、詳しく解説しますので。

2014年5月4日日曜日

育児書は役に立つ? どの育児書が正しい? 

 育児書を大量に読んでいると言うと、
「完璧な子育てを目指してる?」
 と誤解されることがありますが…。私が育児書を読んでいるのは、楽をするためです。

 学生時代に、少しだけ山登りをしました。メインは北アルプス。南アルプスも1回だけ登りましたね。 
 登山に欠かせないのが、地図とガイドブックです。とくにお世話になったのが、昭文社の「山と高原地図」。登山コースと目印、大体の所要時間が書いてあります。とくに便利だったのが、地図のあちこちに書き込んである「飲み水」「ガレ場」「雪渓」などの注意情報でした。

 道そのものはわかっていても、
「どんなトラブルが予想されるのか」
「どこで水が補給できるのか」
「何を持っていれば便利か」
 といった情報が有ると無いとでは、歩きやすさが大違いです。

 育児書も同じです。
 どんなトラブルが予想されるのか。どんな心構えだと、トラブルを乗り越えやすいのか。考えておいたほうがいいこと…。そうした情報を与えてくれているのです。
 書いてあること全てを実行する必要はありません。地図で言えばコースタイム通りに歩く必要はないし、休憩所と書いてある場所を飛ばしても構いません。
 自分にとって必要な部分だけ使えば十分、親も子供も楽ができますから。

 「どの育児書が正しいか」という問題も、そんなに気にしないでいいようです。
 何十冊も読んでみた感想ですが、最近の育児書は心理学や統計学の裏付けを持っていることが多いので、たいていの育児書で原則は共通しています(数冊のトンデモ本はありましたが…)。キーワードは共感、受容、自主性、励まし、といったところ。こうした原則を書いてある本なら、それほど差はありません。

 とはいえ、私個人のオススメは「モンテッソーリ教育」と「親業」。モンテッソーリは子供についての概念を変えてくれますし、親業は、子供とのコミュニケーションについての、もっともよくまとまった技術です。

 「親業」については、まだ書いていなかったので、次回からしばらく「親業」の話です。

付記
 育児書といえば、少し前まで「赤ちゃんが泣いた時は、抱いたり授乳した方がいい」説と、「泣いたときに抱き上げるとワガママになる」説の、どちらが正しいかという論争がありました。
 この論争については少し前、アメリカで二百数十人を0歳から成人後まで20年以上追跡する調査が行われ、はっきりした結論が出ました。

 結果としては、「泣いた時に抱き上げる」が正解。
 ケアを受けることで、親としっかりした愛着関係を作ることができ、その後も社会性、積極性、落ち着きなど、ほぼすべての項目で高い数値を示したとのこと。なんと、高校を卒業する率にまで、はっきりした差がついたそうです(親のケアが少なかった子供ほど、中退する率が高い)。
  (「成功する子・失敗する子」ポール・タフ 英治出版)


2014年5月1日木曜日

「天才! 成功する人々の法則」⑥ 文化は無意識のうちに、強力に働く

 この本の第二部は、文化が人の能力や才能に影響を与えることについて語っています。

 たとえば、いろんな学力テストで、アジアの学生が高い得点を取る傾向があります。こうした傾向の理由として、グラッドウェルは稲作文化を取り上げています。

 稲作文化は、極めて労働集約性の高い仕事です。狩猟のような、あるいは牧畜のような産業は、努力よりも気候や土地、もっと言えば運の良さに左右されるところがあります。
 ところが農業、中でも稲作は手をかければかけるほど、収穫量が上がる傾向があります。そうした文化では、長く、一生懸命に働くことが文化的に美徳とされるのです。
 そうした文化を背景に持っているアジアの学生は努力をいとわないので、テストで高得点を取ることが多いのではないか、というのが著者の主張でした。


 ここから感想。

 文化というのは、その文化の中に住んでいる限り当たり前のことで、そんな文化を持っていることを自覚しません。
 わかりやすい例としては、テレビ番組「秘密のケンミンショー」のお約束がありますね。
「実は、○○をするのは、✖✖県だけなんですよ」
 というやつ。

 私事ですが、ウチは関西人と東北人の夫婦なので、このお約束を実際に何度も体験してきました。
 例えば山形県民の妻は、蕎麦屋にラーメンがあるのをあたりまえだと思っていましたし、リンゴを買うときに「今はもう富士の旬だから、王林は買っちゃだめ」などと、時期に合わせて美味しい品種のリンゴを選ぶのが当然だと思っています。リンゴはなんでもリンゴだと思っていた関西人には、驚きでした。
 あと「サクランボを一粒づつ食べるなんてケチなことをしない! 5,6粒放り込んで、種だけ吹く!」と、スイカのような食べ方を強要されたり…。

 文化は無意識で働く分だけ、強力です。

 先日読んだ「スタンフォード大学の自分を変える教室」に、強力な例が乗っていました。
肥満は伝染するというのです。
 調査によれば、肥満している人の友達は、肥満している傾向が見られたとのこと。近くにいる人が肥満していると、肥満の状態を当たり前だと感じるように、基準がズレてしまうのだと分析されています。「赤信号みんなで渡れば怖くない」みたいなもので、それが普通だと思ってしまうのです。
 何かやりたいことがあるときには、そのことをやっている人の中に入るのが有効な方法だと書いてありました。

 子供に読書の習慣をつける、もっともよい方法は親が読書することだそうです。親が不健康な食生活をしていれば、子供も不健康になりがちですし、スポーツ好きの親の子供は、かなりの確立でスポーツをするようになります。
 マイナス面でも、親が暴力的なら子供も暴力的になりますし、親の口癖がそのまま子供の口癖になっているのもよくみること。

 考えてみれば、昔から
 「子供は、親の言うように育たない。親のするように育つ」
 などと言われてきました。

 子供に期待するからには、親も頑張れということでしょうか。あるいは、自分ができないことは、子供に押し付けるな、という意味かもしれません(笑)。

 
 長々やってきましたが「天才! 成功する人々の法則」の話は今回で終わり。
 お付き合いくださって、ありがとうございました。