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2018年12月30日日曜日

今年度から、中学入試が変わる


 表題、唐突なようですが、ちゃんとした根拠があります。
 どのような方法で選べば、入学後に伸びる優秀な生徒を選抜することができるか。その基準が明確にされてしまったからです。

 基準を示したのは、2018年のベストセラー「AIvs教科書が読めない子どもたち」。

 AI(人工知能)の性能はどんどん向上して、いずれ人間の仕事を奪うようになる、と言われています。
 著者はAIの開発者で、AIには得意分野と不得意分野に極端な差があると語ります。とくに、ものごとの関連性や価値観などの「意味」を理解するのが苦手なので、意味の理解を必要とする仕事は、当分の間、AIに取って代わられないだろうと予想します。 

 ところが、人間にも、意味が理解できない人が多いというのです。著者が開発したRSTという読解力テストを人間に解いてもらったところ、中学生、高校生はもちろん、大人でも文章の意味が正確に理解できない人が、かなりの高確率でいることが判明します。

 例えば右の問題では、中学生の半分、高校生の三分の一が、正解できていません。

 読解力がない人たちは「AIにできない仕事」につくことができないため、今後AIに仕事を奪われる可能性が高い、というのが、著者の主張です。


 さて、話を戻します。
 この本の中で、読解力と成績について書いた部分があります。
 高校生の読解力と、在籍する高校の偏差値を調査したところ、非常に強い関係性があったそうです(読解力が高い生徒は、偏差値の高い学校にいる)。

 その理由を、著者はこう分析します。
「読解力のある生徒は、教師の説明をすぐに理解できる。教科書や参考書を読みとって、自ら学習することもできる。そのため読解力が低い生徒よりも成績が伸びて、偏値の高い高校に進学すると考えられる」

 受験のある学校、とくに私立学校は、優秀な生徒を集めて学校の評価を上げなくてはなりません。そこで優秀な受験生を選別するためのテストが作られてきました。
 とはいえ、問題のパターンは限られており、塾などで集中的に詰め込めば、対策が可能。入学したあとで伸びない生徒が合格する可能性もありました。

 ここで、RSTを始めとする読解力テストの重要性が出てきます。
 読解力テストは対策が難しく(国語は、短期間で成績が伸ばしにくい科目とされています)、受験生のその後の伸びを高確率で判定できるとなれば、学校としては願ったり叶ったり。
 成績を上げやすい生徒を判定できる、こんな便利なツールを、受験担当者が使わないはずはありません。

 もちろん、すでにわかって使っていた学校は多かったでしょう。
 しかし、その根拠がデータで示された以上、より読解力重視にかわるはずです。
 そうなったとき、子供にどうやって読解力をつけてやればいいのか。それについては、次回。


付記
このブログでも、2015年の2月に「読解力が格差を生む時代」という記事を書いたことがあります。それが、こんな形で裏付けられたのは、驚きでした。