「たまたま―日常に潜む偶然を科学する」という本です。
単なる偶然を、まるで意味があるかのように勘違いしてしまうケースを解説した本です。
印象に残っているのが、厳しい飛行教官の話。彼は、自分の生徒たちを厳しく怒鳴りつけることで有名だったそうです。いわく、
「生徒は褒めると気が緩んで失敗する。叱りつければ、失敗が減って上達する」
というのです。一見、わかりやすく見える意見。
しかし、この本を書いている科学者は、それは単なる偶然にすぎないといいます。
■どんなときに叱って、どんな時に褒めている?
生徒の実力を、仮に100としましょう。もちろん、いつも実力通りに飛行機を飛ばせるわけではありません。70くらいの力しか出せない時もあれば、130の力が出せる時もあります。これは、偶然によるばらつきです。教官が生徒を叱るとしたら、彼が70の力しか出せなかった時でしょう。叱られた彼は、次の時にはいくつの力を出すでしょうか? もともと100の力があるのですから、かなりの確率で100前後で飛ぶはずです。しかし教官は「叱ったから上手くなった」と考えます。
逆に、彼が130の力を出したら、教官は褒めるでしょう。しかし褒められた彼が次に飛ぶときは、もともとの実力、100前後で飛ぶ可能性が高いです。教官は「褒めたからダメになった」と判断するでしょう。
■結果で一喜一憂しない
つまり、最初に上手く行かなかった(叱られた)場合、その次にはマシな結果が出るので、叱られて上達したように見えるのです。逆に、上手くできた(褒められた)後には、低い結果が出る可能性が高いので、褒めると気が緩むように見えるのです。つまり、褒められたり叱られたりすることと関係ない実力のばらつきを、褒めたり叱ったりの結果だと考えているところが間違い、ということ。
この話、子供を育てるときにも覚えていて良さそうです。
親にとっても、子供を叱るのはストレスのはず。気楽に過ごせるなら、そのほうがいいに決まってますよね。
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