先日、娘が
「お父さん、見て見て! 実験!」
と言って、水の入ったプラスチックボトルを持ってきました。
よく見ると、直径1センチくらいの気泡があり、何か黒い点が。
「これだけの空気で、アリがどれだけ生きられるか、実験!」
なるほど、気泡の中にアリが浮いています。
「かわいそうだから出してやれ」と言いかけたところで、言葉が止まってしまいました。
■都合に合わせて基準が変わる…
つい数日前、家に入ってくるアリを退治するためにホウ酸砂糖を設置しました。効果てきめんで、庭には大量のアリの死骸が。子供と「すごい効果だなー」と感心したところでした。殺虫剤で大量にアリを殺しておいて、実験はダメという説明が難しい。
無駄に殺さない、というのが私の信条ではありますが、空気の重要性を調べたいという実験も、意味が無いとは言えません。結局、
「アリに、きちんと感謝するように」
という、ななめ上の返事をするしかありませんでした。
■学びの機会と、生き物の生命
生き物の命をどう教えるか、という問題は難しいです。
例えば、子供がカメや金魚を飼う時。きちんと世話をしないと死んでしまうので、責任感を学ぶ良いチャンスです。
子供は結果を予測するのが苦手です。世話しないと死ぬよ、と言っても、実際に死ぬのを見るまではその重大性がわかりません。
本当の意味で責任を学ばせるには、世話を怠って、生き物が死ぬことが必要です(先日書いた日記と同じですね)。そうしてこそ、はじめて責任を負うことの意味がわかります。生き物には、教育のために死んでもらうことになります。
しかし、死ぬとわかっていて、黙って見ているのは、なかなかできないこと。こちらも情がうつるので、つい口出しして、世話をさせてしまいます。恥ずかしながら、まだ子供が世話をしないために死んだ生き物はいません…。
この問題は、迷いながらやっていくしかないのかもしれません。
■さて、結果は
実験のアリですが、24時間たってもまだ生きていました。思った以上に、少ない酸素で生きられるようです。その後、中の空気を完全に抜くと、すぐに動かなくなったとのことでした。
娘、もう一つ発見。
「お父さん、アリって、死ぬと沈むよ!」
これも、科学する心の現れということで…。
リンクユニット上
2014年9月20日土曜日
2014年9月17日水曜日
三年習うより、三年師を探せ、という箴言
なんであれ、子供の頃から習い事をさせれば、上達すると考えますよね。
「一万時間の法則」で書いたように、能力は練習時間で決まることが多いので、それなりに根拠が有ります。
ただ、それがいつもうまくいくわけではない…と、自分自身の体験から思います。
■習うことでかえって嫌いになることも
私が幼稚園児の頃、習字を習いに行っていました。
けっこう大きな習字教室だったのですが、先生がちょっとキツイ人。いつも怒られるか嫌味を言われるかだったので嫌になり、小学校二年生でやめてしまいました。ついでに習字も大嫌いになり、
「字の形にこだわってるのは、心が歪んでるからだ」
などと、負け惜しみを言っていたほど。
兄と私がその教室に通ったのですが、二人とも字をきれいに書こうという意欲がないため、すっかり悪筆になってしまいました。
弟だけは習字教室に行かなかったのですが、その弟が一番字がきれい、という逆転現象が起きてしまいました。
■好きこそものの上手なれ
思うのですが、ある人にとって良い先生が、別の人にとっても良い先生とはかぎりません。とくに、初心者と上級者では必要な要素が違ってきます。
上級者の場合は、先生がどれだけ高い技術を持っていて、見せることができるかが問題になります。
一方、初心者の場合には、それほど高い技術は必要ありません。基本をきっちり教えることができれば、初心者の先生としての技術は十分です。
むしろ、技術よりも重要なのは、習い事を好きにさせられるかどうかでしょう。
昔から「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますね。好きなものに対しては、やれと言われなくても自ら努力して、伸びていくもの。
だからこそ、初心者の指導をする先生は、子供の興味を引き出し、好きにさせることが最優先になります。粗暴だったり、感情の安定が悪い先生はもってのほか。退屈な教え方をする先生も避けたいものです。
子供に習い事をさせるなら、ただ先生任せにしていてはいけません。
先生がどんなふうに指導するかを見て、必要なら先生を変えるくらいの覚悟必要です。
お金と時間を使って嫌いにさせるほど、ムダなことはありませんから。
「一万時間の法則」で書いたように、能力は練習時間で決まることが多いので、それなりに根拠が有ります。
ただ、それがいつもうまくいくわけではない…と、自分自身の体験から思います。
■習うことでかえって嫌いになることも
私が幼稚園児の頃、習字を習いに行っていました。
けっこう大きな習字教室だったのですが、先生がちょっとキツイ人。いつも怒られるか嫌味を言われるかだったので嫌になり、小学校二年生でやめてしまいました。ついでに習字も大嫌いになり、
「字の形にこだわってるのは、心が歪んでるからだ」
などと、負け惜しみを言っていたほど。
兄と私がその教室に通ったのですが、二人とも字をきれいに書こうという意欲がないため、すっかり悪筆になってしまいました。
弟だけは習字教室に行かなかったのですが、その弟が一番字がきれい、という逆転現象が起きてしまいました。
■好きこそものの上手なれ
思うのですが、ある人にとって良い先生が、別の人にとっても良い先生とはかぎりません。とくに、初心者と上級者では必要な要素が違ってきます。
上級者の場合は、先生がどれだけ高い技術を持っていて、見せることができるかが問題になります。
一方、初心者の場合には、それほど高い技術は必要ありません。基本をきっちり教えることができれば、初心者の先生としての技術は十分です。
むしろ、技術よりも重要なのは、習い事を好きにさせられるかどうかでしょう。
昔から「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますね。好きなものに対しては、やれと言われなくても自ら努力して、伸びていくもの。
だからこそ、初心者の指導をする先生は、子供の興味を引き出し、好きにさせることが最優先になります。粗暴だったり、感情の安定が悪い先生はもってのほか。退屈な教え方をする先生も避けたいものです。
子供に習い事をさせるなら、ただ先生任せにしていてはいけません。
先生がどんなふうに指導するかを見て、必要なら先生を変えるくらいの覚悟必要です。
お金と時間を使って嫌いにさせるほど、ムダなことはありませんから。
2014年9月9日火曜日
夏休みの日記を、子供に自己管理させてみた
日記の宿題。
子供の学校は夏休み以外でも毎日、日記の宿題があって、それを書かせるのが一苦労です。
当たり前ですが、子供はそんなもの書きたくありませんから、なんとかギリギリまで逃げたいわけです。しかたなく「日記を終わらせてからテレビ」とか、「日記を終わらせてからマンガ」というように、先行条件にして、書かせていました。
が、ある日、考えました。
■自分で考えて行動できる人になってほしい
親が急かして書かせても、それは人の指示に従う訓練にしかなりません。自分で自分の行動を決めることはないので、いわば使われる訓練です。
将来的には、自分でやるべきことを判断して、行動できるようになって欲しい。長い目で見て、親が書かせることはためにならないと判断しました。
以前に紹介した本「子供の心のコーチング」で、「遅刻するのは子供の問題であって、親の問題ではない。問題を子供に返して、失敗から学ばせる」と書いてあったのを思い出し、妻と相談。
「よし、子供に任せよう!」
と決めました。自分でやってみて、間に合わなかった体験を繰り返すことで、自分の行動を律することを覚えて欲しかったのです。
子供に「これからは日記のことは一切言わない」と伝えました。
それで間に合わなかったら、先生に「すみません、やっていませんでした」と謝りなさい、というところまで約束させました。
■夏休みの途中、やっぱり遅れ始める
やってみると、急かさなくていいので、親は楽。子供も、言われることがないので上機嫌。家庭内の空気はいい感じです。
最初の数日は、初めての緊張感もあって、頑張って日記を書いていました。
それから、書き忘れの日が連続3日間。3日目になって、慌てて始めましたが、慌てたお陰であっという間に終了。
この、1日で3日分の日記を書いたのが、良くない自信になったようです。
「その気になれば3日分くらい、すぐできるんだ」
と思ったようで、ダラダラと遅れ始めました。
妻と、いよいよ溜まり始めたなあ、と顔を見合わせました。
夏休みの終わりになって、溜まった日記に呆然とするはずです。書いても書いても終わらない体験をして、場合によっては先生に頭を下げることでしょう。そうした失敗を繰り返して、自分から行動を律することを覚えるはず。
親は我慢!
■夏の終わり。予想外の結末
本人が再び慌て始めたのは、夏休みも残り一週間になってから。
日付を見て、溜まっている日記の数を数えたのでしょう。急に涙目になって、
「もう、日記が終わるまで、机の前から離れない」
などと、突飛な宣言をしたりしました。
もちろん、そんな決心は続かないわけですが…(笑)
それでも、頑張ってまとめ書き。少しずつ、少しずつ追いついて、とうとう8月31日の夜7時。
「終わったよ!」
と得意満面。
おかしい。こんなはずじゃなかったのに。
妻が思わず口走りました。
「あー、間にあわせちゃった!」
思わず私も
「大丈夫、きっとまたチャンスがある!」
いつの間にか、間に合わないことを期待していた両親。見事な本末転倒ぶりでした。
これが自分で自分を律する訓練になったのかはわかりません。ただ、問題を子供に返すことで、親がイライラしなくて済んだのは、大きな収穫でした。
子供の学校は夏休み以外でも毎日、日記の宿題があって、それを書かせるのが一苦労です。
当たり前ですが、子供はそんなもの書きたくありませんから、なんとかギリギリまで逃げたいわけです。しかたなく「日記を終わらせてからテレビ」とか、「日記を終わらせてからマンガ」というように、先行条件にして、書かせていました。
が、ある日、考えました。
■自分で考えて行動できる人になってほしい
親が急かして書かせても、それは人の指示に従う訓練にしかなりません。自分で自分の行動を決めることはないので、いわば使われる訓練です。
将来的には、自分でやるべきことを判断して、行動できるようになって欲しい。長い目で見て、親が書かせることはためにならないと判断しました。
以前に紹介した本「子供の心のコーチング」で、「遅刻するのは子供の問題であって、親の問題ではない。問題を子供に返して、失敗から学ばせる」と書いてあったのを思い出し、妻と相談。
「よし、子供に任せよう!」
と決めました。自分でやってみて、間に合わなかった体験を繰り返すことで、自分の行動を律することを覚えて欲しかったのです。
子供に「これからは日記のことは一切言わない」と伝えました。
それで間に合わなかったら、先生に「すみません、やっていませんでした」と謝りなさい、というところまで約束させました。
■夏休みの途中、やっぱり遅れ始める
やってみると、急かさなくていいので、親は楽。子供も、言われることがないので上機嫌。家庭内の空気はいい感じです。
最初の数日は、初めての緊張感もあって、頑張って日記を書いていました。
それから、書き忘れの日が連続3日間。3日目になって、慌てて始めましたが、慌てたお陰であっという間に終了。
この、1日で3日分の日記を書いたのが、良くない自信になったようです。
「その気になれば3日分くらい、すぐできるんだ」
と思ったようで、ダラダラと遅れ始めました。
妻と、いよいよ溜まり始めたなあ、と顔を見合わせました。
夏休みの終わりになって、溜まった日記に呆然とするはずです。書いても書いても終わらない体験をして、場合によっては先生に頭を下げることでしょう。そうした失敗を繰り返して、自分から行動を律することを覚えるはず。
親は我慢!
■夏の終わり。予想外の結末
本人が再び慌て始めたのは、夏休みも残り一週間になってから。
日付を見て、溜まっている日記の数を数えたのでしょう。急に涙目になって、
「もう、日記が終わるまで、机の前から離れない」
などと、突飛な宣言をしたりしました。
もちろん、そんな決心は続かないわけですが…(笑)
それでも、頑張ってまとめ書き。少しずつ、少しずつ追いついて、とうとう8月31日の夜7時。
「終わったよ!」
と得意満面。
おかしい。こんなはずじゃなかったのに。
妻が思わず口走りました。
「あー、間にあわせちゃった!」
思わず私も
「大丈夫、きっとまたチャンスがある!」
いつの間にか、間に合わないことを期待していた両親。見事な本末転倒ぶりでした。
これが自分で自分を律する訓練になったのかはわかりません。ただ、問題を子供に返すことで、親がイライラしなくて済んだのは、大きな収穫でした。
2014年9月1日月曜日
ADHDは、本当に育て方と関係がないのか?
最初に書いておきますが、この記事に書かれたことは私個人の考えであり、現時点で十分な根拠をもつ説ではありません。そのことに注意して読み進めてください。
■ADHDとは?
ADHDの子供は、落ち着いて座っていたり、注意を持続することが苦手。やっていることを途中で忘れてしまったり、忘れ物が多かったりします。大きな声を出したり、衝動的に歩きまわったりするので、学級崩壊の原因と言われることもあります。日本の場合、子供のだいたい5%がADHDというデータも。
昔は躾の問題と言われていましたが、今では生まれつき脳の一部が上手く働かない事によるものであると考えられています。
しかし最近、いろんな本を読んでいて、ADHDはすべて生まれつき、という理論に疑問を感じるようになってきました。生育環境によってADHD、またはその類似症状が生じることがあるのではないか、と思うのです。
■ADHDは、幼児期の環境から?
生育環境が原因と考えるのは、生育環境と問題行動の関連性を表すデータがあちこちで見られるからです。たとえば
・子供時代の大きなストレスが、行動に影響
前々回に紹介した「成功する子・失敗する子」に、子供の頃に強いストレスを受けると、問題行動が増えるという調査結果がありました。
問題行動を起こす子供の割合は、ストレス体験値0の子供で3%。ストレス体験値4以上の子供で52%と、完全な比例関係があります。
・親と子供の愛着関係の不足が行動に影響
同じく「成功する子・失敗する子」のデータ。
親が子供の感情を汲み取り、話しかけたり抱っこしたりすることは、ストレスの悪影響を緩和する働きがあります。そのため、親が子供の感情を無視したり、関わらなかった場合にも、問題行動の確率が上がります(前回を御覧ください)。
・ストレスによる脳の損傷
虐待を受けた子供の脳では、ストレスにより脳細胞が破壊されます。とくにダメージが大きいのは一時記憶を司る海馬。被虐待児では、そうでない場合と比べて10%前後小さくなっているそうです。
現在、海馬の不調がADHDの原因の1つと考える学者がいます。海馬はコンピュータで言うとメモリにあたり、その能力が低いと、記憶能力の減少や行動の不安定を起こすと考えられているのです。
海馬の他に、感情を司る扁桃体も破壊され、急激な攻撃性や、うつ状態などの原因となるという説もあります。
■モンテッソーリ教育からは
モンテッソーリ教育では、敏感期に十分な集中ができなかった場合には、落ち着きが無い、乱暴であるなどの逸脱発達が起こるとしています。
以前も書いたように、手を使う作業に集中することは、脳の自制心を司る部分を訓練すると考えられます。
親の過干渉で自らの課題に集中できなかったり、作業をする環境が無かったりすると、その機会を得られず、問題行動を起こしやすくなるのです。
虐待やストレスの場合と違うのは、脳細胞が破壊されるのではなく、発育の機会が不足していること。そこで、手を使う作業に集中する機会を持つことで「正常化」、つまり回復させることができるというのが、モンテッソーリ教育の考え方です。
■もちろん育て方と関係のないADHDもある。しかし…
ADHDは脳の機能の問題なので、しつけが足りないとか、甘やかしによって発症するというのは明らかな間違いです。また、生まれつきADHDの人もいるでしょう。それは間違いありません。
しかし、育つ過程で脳が傷つけられたり、必要な発達ができないことがある以上、環境によっても発症する可能性を考えるのが自然ではないでしょうか。全て生まれつきの問題で、育ちに関係ないというのは、かえって不自然です。
もし未発達による問題行動なら、集中出来る環境を作れば改善する可能性があります。また、萎縮した海馬も、安定した環境で生活していれば、細胞の新生を助けることがわかってきています。
回復の可能性があるのに、すべてを生まれつきのせいにしてしまうのは、かえってチャンスを奪うとも思われます。
今後、生育歴や脳の働きなど、さらなる調査が必要だと思います。
■ADHDとは?
ADHDの子供は、落ち着いて座っていたり、注意を持続することが苦手。やっていることを途中で忘れてしまったり、忘れ物が多かったりします。大きな声を出したり、衝動的に歩きまわったりするので、学級崩壊の原因と言われることもあります。日本の場合、子供のだいたい5%がADHDというデータも。
昔は躾の問題と言われていましたが、今では生まれつき脳の一部が上手く働かない事によるものであると考えられています。
しかし最近、いろんな本を読んでいて、ADHDはすべて生まれつき、という理論に疑問を感じるようになってきました。生育環境によってADHD、またはその類似症状が生じることがあるのではないか、と思うのです。
■ADHDは、幼児期の環境から?
生育環境が原因と考えるのは、生育環境と問題行動の関連性を表すデータがあちこちで見られるからです。たとえば
・子供時代の大きなストレスが、行動に影響
前々回に紹介した「成功する子・失敗する子」に、子供の頃に強いストレスを受けると、問題行動が増えるという調査結果がありました。
問題行動を起こす子供の割合は、ストレス体験値0の子供で3%。ストレス体験値4以上の子供で52%と、完全な比例関係があります。
・親と子供の愛着関係の不足が行動に影響
同じく「成功する子・失敗する子」のデータ。
親が子供の感情を汲み取り、話しかけたり抱っこしたりすることは、ストレスの悪影響を緩和する働きがあります。そのため、親が子供の感情を無視したり、関わらなかった場合にも、問題行動の確率が上がります(前回を御覧ください)。
・ストレスによる脳の損傷
虐待を受けた子供の脳では、ストレスにより脳細胞が破壊されます。とくにダメージが大きいのは一時記憶を司る海馬。被虐待児では、そうでない場合と比べて10%前後小さくなっているそうです。
現在、海馬の不調がADHDの原因の1つと考える学者がいます。海馬はコンピュータで言うとメモリにあたり、その能力が低いと、記憶能力の減少や行動の不安定を起こすと考えられているのです。
海馬の他に、感情を司る扁桃体も破壊され、急激な攻撃性や、うつ状態などの原因となるという説もあります。
■モンテッソーリ教育からは
モンテッソーリ教育では、敏感期に十分な集中ができなかった場合には、落ち着きが無い、乱暴であるなどの逸脱発達が起こるとしています。
以前も書いたように、手を使う作業に集中することは、脳の自制心を司る部分を訓練すると考えられます。
親の過干渉で自らの課題に集中できなかったり、作業をする環境が無かったりすると、その機会を得られず、問題行動を起こしやすくなるのです。
虐待やストレスの場合と違うのは、脳細胞が破壊されるのではなく、発育の機会が不足していること。そこで、手を使う作業に集中する機会を持つことで「正常化」、つまり回復させることができるというのが、モンテッソーリ教育の考え方です。
■もちろん育て方と関係のないADHDもある。しかし…
ADHDは脳の機能の問題なので、しつけが足りないとか、甘やかしによって発症するというのは明らかな間違いです。また、生まれつきADHDの人もいるでしょう。それは間違いありません。
しかし、育つ過程で脳が傷つけられたり、必要な発達ができないことがある以上、環境によっても発症する可能性を考えるのが自然ではないでしょうか。全て生まれつきの問題で、育ちに関係ないというのは、かえって不自然です。
もし未発達による問題行動なら、集中出来る環境を作れば改善する可能性があります。また、萎縮した海馬も、安定した環境で生活していれば、細胞の新生を助けることがわかってきています。
回復の可能性があるのに、すべてを生まれつきのせいにしてしまうのは、かえってチャンスを奪うとも思われます。
今後、生育歴や脳の働きなど、さらなる調査が必要だと思います。
2014年8月24日日曜日
長い人生で子供を助けるのは、幼児期のケア
前回書いたように、幼児期の強いストレスで、心身の発達が阻害されることはわかりました。そうしたストレスから子供を守る方法は?
現代科学の結論は、簡単です。子供の声に応えること、抱きしめること、気持ちを汲み取ってやることです。
■ストレスの影響を消す、親のケア
まずは、ラットの実験から。
実験用の子ラットに実験の処置をすると、子ラットはストレスを受けて、大量にストレスホルモンが分泌されます。ところが処置の後、母ラットが近づいて、なめたり毛づくろいすると、そのストレスホルモンが急激に下がったといいます。
ただ、母ラットの行動には個体差があり、子ラットにケアをする母ラットも、全く関心を持たない母ラットもいました。
マギル大学の研究者はこのことに興味を持ち、成長した子ラットを比較する実験を行いました。その結果、
「どのテストでも高LG(ケアを受けた)グループの子ラットが良い結果を出した。迷路を抜けるのもうまかった。より社会性があった。好奇心も強かった。攻撃性が低かった。自制がきいた。より健康で、長生きだった。」(p.67)
個人的には、ラットの自制心をどうやって測定したのか興味がありますが…(笑)。親子の組み合わせを変えて実験しても、同じ結果に。
ケアを受けなかったラットは、不安感が強く、攻撃的で、迷路などの記憶が悪かったそうです。
人間の赤ちゃんでも親のケアとストレスホルモンの関係を調査したところ、言葉をかけたり抱きしめたりすることでストレスホルモンが減少することが確かめられました。
人間の場合、そうしたケアは、成長後にどのように影響するのでしょうか。
■愛着関係と、子供の未来
ミネソタ大学の研究者は、267人の妊婦を選び、その子供が生まれた時から数十年にわたって追跡調査しました。母親の子供へのケアと、「愛着関係」がどのような影響をもたらすかを調べたのです。
愛着とは、特定の人間との精神的な結びつきを表す用語で、アタッチメントとも言います。大雑把に言えば、子供が親を信頼し、甘える関係。お母さんにくっつきたがったり、離れることを嫌がったりする子供を見たことがありますよね。
母親が、子供が泣いたり声を出したりした時に、抱き上げたり声をかけたりして、子供に応えた場合、良好な愛着関係を形成しました。
逆に、親が子供の声や行動に反応しなかった場合には、こうした愛着形成は弱いか、見られなかったとのこと。
研究者は親のケアと、子供の愛着行動、その後の人生を追跡調査しました。その結果。
「多くの子供のケースで、満1歳時点での愛着関係が、その後の人生を広範囲にわたって予測できる指標となっていた。愛着の安定した子供たちは、人生のどの段階でも社会生活を送るうえでより有能だった。」(p.74)
実験を知らない教師たちに、学校での行動や学力などを評価させました。わずかに例外はあるものの、愛着関係の良好な生徒の方が、生活態度も学習態度も良好でした。学力についても同様の結果が出ています。
それどころか、
「子供たちの高校生活を追ったところ、どの生徒がきちんと卒業するかを予測する際に、知能検査や学力テストの得点よりも、幼少期の親のケアに関するデータの方が精度が高かった。(中略)精度は77%だった。つまり、子供たちが四歳にも満たないうちに、誰が高校を中退するかを8割近い確率で予測できたことになる」(同上)
267人は母数として少ない感じもしますが、77%というのは、十分すぎるほど明確な結果です。親が幼児の声や行動に適切な反応を返す、というケアが多いか少ないかが、学歴と関係していることは間違いなさそうです。
ストレスホルモンから守られたせいなのか、信頼関係そのものが良い作用をしたのかはわかりません。ただ、きちんとケアを受けて、愛着関係を形成した子供たちのほうが、社会で能力を発揮できるのは確かなようです。
子供の能力を発揮させるには、子供の感情をくみ取り、言葉やスキンシップで返してやること。それが、現代科学による結論です。
■低所得の連鎖を避けるために
この調査の結果を受けて、アメリカでは一風変わった低所得者の援助が始まったそうです。
よく言われることですが、低所得者の子供は、十分な教育を受けることができなくて、同じように低所得者になることが多いのです。
これまでの援助は、いかに低所得の子供たちに教育を与えるかでした。しかし、教材や教師によるケアは多額の予算が必要ですし、親が教育を与えるにはその能力が足りません。
しかし、子供のいる親にケアの必要性と方法を教えることは簡単にできます。ケアも愛着関係も低かった低所得者家庭の親たちが、わずか数回の指導で子供の声に応えるようになり、良好な愛着関係が築けるようになったと言います。
こうして育っていく子供たちは、ケアから獲得した性格の強みを生かして、低所得者から抜けだしていくだろうと期待されています。
また、アメリカでは伝統的に子供は子供部屋で放っておくことが多かったのですが、こうした調査の積み重ねによって、放っておく育児はだんだん減っているそうです。
■親が子供に与えてやれるもの
ここから感想。
ストレスホルモンの悪影響もさることながら、親がきちんと応えることが社会的な訓練にもなっているのではないかと思います。子供は親の姿を見て成長するわけで、人が呼んでも泣いていても無視する親を見ていたら、社会性が育つわけはありません。
日本でも一時、欧米の影響で「泣いても放っておく」方が良いとされたことがあります。
一人で泣いて耐える方が鍛えられる、と考えられていたのですが、いまや迷信であることがわかりました。
モンテッソーリ教育でも言うように、子供は大人とは別の生き物。大人を鍛えるように子供を鍛えても、成果が出るわけではないのです。
子供の時代を大事にしてやること。
赤ちゃんが泣いたら抱き上げてやること。
子供が喜んだり、悲しんだりしたら、一緒に喜んだり悲しんだりしてやること。
その気になれば誰でもできることですが、親が子供に与えられる、大きな財産です。
■もし不幸にして、幼児期に十分にケアをしてやれなかったら
それでも、人間は変わる力があると、著者は言います。自制心、楽観主義、やりぬく力などを身につけることで、人生を変えられるとのことです。
現代科学の結論は、簡単です。子供の声に応えること、抱きしめること、気持ちを汲み取ってやることです。
■ストレスの影響を消す、親のケア
まずは、ラットの実験から。
実験用の子ラットに実験の処置をすると、子ラットはストレスを受けて、大量にストレスホルモンが分泌されます。ところが処置の後、母ラットが近づいて、なめたり毛づくろいすると、そのストレスホルモンが急激に下がったといいます。
ただ、母ラットの行動には個体差があり、子ラットにケアをする母ラットも、全く関心を持たない母ラットもいました。
マギル大学の研究者はこのことに興味を持ち、成長した子ラットを比較する実験を行いました。その結果、
「どのテストでも高LG(ケアを受けた)グループの子ラットが良い結果を出した。迷路を抜けるのもうまかった。より社会性があった。好奇心も強かった。攻撃性が低かった。自制がきいた。より健康で、長生きだった。」(p.67)
個人的には、ラットの自制心をどうやって測定したのか興味がありますが…(笑)。親子の組み合わせを変えて実験しても、同じ結果に。
ケアを受けなかったラットは、不安感が強く、攻撃的で、迷路などの記憶が悪かったそうです。
人間の赤ちゃんでも親のケアとストレスホルモンの関係を調査したところ、言葉をかけたり抱きしめたりすることでストレスホルモンが減少することが確かめられました。
人間の場合、そうしたケアは、成長後にどのように影響するのでしょうか。
■愛着関係と、子供の未来
ミネソタ大学の研究者は、267人の妊婦を選び、その子供が生まれた時から数十年にわたって追跡調査しました。母親の子供へのケアと、「愛着関係」がどのような影響をもたらすかを調べたのです。
愛着とは、特定の人間との精神的な結びつきを表す用語で、アタッチメントとも言います。大雑把に言えば、子供が親を信頼し、甘える関係。お母さんにくっつきたがったり、離れることを嫌がったりする子供を見たことがありますよね。
母親が、子供が泣いたり声を出したりした時に、抱き上げたり声をかけたりして、子供に応えた場合、良好な愛着関係を形成しました。
逆に、親が子供の声や行動に反応しなかった場合には、こうした愛着形成は弱いか、見られなかったとのこと。
研究者は親のケアと、子供の愛着行動、その後の人生を追跡調査しました。その結果。
「多くの子供のケースで、満1歳時点での愛着関係が、その後の人生を広範囲にわたって予測できる指標となっていた。愛着の安定した子供たちは、人生のどの段階でも社会生活を送るうえでより有能だった。」(p.74)
実験を知らない教師たちに、学校での行動や学力などを評価させました。わずかに例外はあるものの、愛着関係の良好な生徒の方が、生活態度も学習態度も良好でした。学力についても同様の結果が出ています。
それどころか、
「子供たちの高校生活を追ったところ、どの生徒がきちんと卒業するかを予測する際に、知能検査や学力テストの得点よりも、幼少期の親のケアに関するデータの方が精度が高かった。(中略)精度は77%だった。つまり、子供たちが四歳にも満たないうちに、誰が高校を中退するかを8割近い確率で予測できたことになる」(同上)
267人は母数として少ない感じもしますが、77%というのは、十分すぎるほど明確な結果です。親が幼児の声や行動に適切な反応を返す、というケアが多いか少ないかが、学歴と関係していることは間違いなさそうです。
ストレスホルモンから守られたせいなのか、信頼関係そのものが良い作用をしたのかはわかりません。ただ、きちんとケアを受けて、愛着関係を形成した子供たちのほうが、社会で能力を発揮できるのは確かなようです。
子供の能力を発揮させるには、子供の感情をくみ取り、言葉やスキンシップで返してやること。それが、現代科学による結論です。
■低所得の連鎖を避けるために
この調査の結果を受けて、アメリカでは一風変わった低所得者の援助が始まったそうです。
よく言われることですが、低所得者の子供は、十分な教育を受けることができなくて、同じように低所得者になることが多いのです。
これまでの援助は、いかに低所得の子供たちに教育を与えるかでした。しかし、教材や教師によるケアは多額の予算が必要ですし、親が教育を与えるにはその能力が足りません。
しかし、子供のいる親にケアの必要性と方法を教えることは簡単にできます。ケアも愛着関係も低かった低所得者家庭の親たちが、わずか数回の指導で子供の声に応えるようになり、良好な愛着関係が築けるようになったと言います。
こうして育っていく子供たちは、ケアから獲得した性格の強みを生かして、低所得者から抜けだしていくだろうと期待されています。
また、アメリカでは伝統的に子供は子供部屋で放っておくことが多かったのですが、こうした調査の積み重ねによって、放っておく育児はだんだん減っているそうです。
■親が子供に与えてやれるもの
ここから感想。
ストレスホルモンの悪影響もさることながら、親がきちんと応えることが社会的な訓練にもなっているのではないかと思います。子供は親の姿を見て成長するわけで、人が呼んでも泣いていても無視する親を見ていたら、社会性が育つわけはありません。
日本でも一時、欧米の影響で「泣いても放っておく」方が良いとされたことがあります。
一人で泣いて耐える方が鍛えられる、と考えられていたのですが、いまや迷信であることがわかりました。
モンテッソーリ教育でも言うように、子供は大人とは別の生き物。大人を鍛えるように子供を鍛えても、成果が出るわけではないのです。
子供の時代を大事にしてやること。
赤ちゃんが泣いたら抱き上げてやること。
子供が喜んだり、悲しんだりしたら、一緒に喜んだり悲しんだりしてやること。
その気になれば誰でもできることですが、親が子供に与えられる、大きな財産です。
■もし不幸にして、幼児期に十分にケアをしてやれなかったら
それでも、人間は変わる力があると、著者は言います。自制心、楽観主義、やりぬく力などを身につけることで、人生を変えられるとのことです。
2014年8月22日金曜日
「子供時代の環境が一生を左右する」という調査
昨年出たばかりの本、「成功する子・失敗する子」(ポール・タフ 英治出版)
アメリカでも、以前は子供が将来成功するかどうかは知性(または知識量)で決まると考えられてきました。しかし子供たちの追跡調査をすると、学力があっても伸びない子供や、最初はさほどでもないのに、あとで伸びる子供が出てきます。
様々な調査で、子供たちの人生を決めているのは、ある時点の知識量ではなく、数字に表れない心理的な特質・性格である、ということがわかってきました。
どんな性質が子供に必要なのか、どのように育てればいいのか、それがこの本のテーマです。
その中で気になった、子供時代の影響の話を紹介します。
■子供の頃の逆境が、健康に影響する
1995年、カリフォルニアの保険団体が、健康診断を受けた人に、子供時代について尋ねるアンケートを行いました。子供時代の「暴力、性的虐待、身体的・感情的ネグレクト、両親の離婚・家族に依存症がいる…」など10項目で、当てはまるものに印をつけて、ポイント化するという調査。
そのポイントと、現在の健康状態を比べると、
子供の頃に辛い環境にいた人ほど、健康状態が悪い、
というはっきりした相関関係が出たそうです。具体的には、逆境度が4点以上の人は、0点の人と比べて
・喫煙率と、がん、心臓病、肝臓病の割合が2倍
・肺気腫、気管支炎の割合が4倍
・アルコール依存が7倍
影響は自殺の数にまで及んでいて、6点を超えると自殺未遂の経験が30倍だったそうです。すでに自殺してしまった人は回答できないので、自殺者を入れたらもっと増えるかもしれません。
■子供時代のストレスは、学習能力にも悪影響
カリフォルニアの実験を知った、サンフランシスコの医師は、先ほどの逆境調査を参考に、学習や行動への影響を見ました。
・逆境度が0点で、学習・行動の問題が見られる子供は 3%
・逆境度が4点以上では学習・行動の問題が見られる子供が 51%
例えるなら、クラスの中でたった一人と、クラスの半分。恐ろしいほどの差です。
ストレスの多い環境で育った子供は、集中したり、じっと座っていたり、教師の指示に従うのが難しかったとのこと。強いストレスが、前頭前野の働きを阻害するものと考えられています。
コーネル大学の研究者は、子供のワーキングメモリ(一時記憶)と、ストレスとの関係を調査しました。
ワーキングメモリとは、作業中の手順を覚えていたり、計算をする間に桁上りを覚えていたりするのに使う短期記憶能力。学習や仕事で重要な働きをします。
そして、やはりストレスが高い環境の子供ほど、ワーキングメモリ(一時記憶)の機能が低いという結果でした。
著者は、こうした脳の変化は、ストレスホルモンが及ぼす悪影響によるものではないかと考えています(神経細胞が、強すぎる反応に耐えられず死滅するという説もあります)。
■以下、感想
著者は、子供を将来の成功へ導く第一歩は、幼少期に極端なストレスから守ることである、と結論づけています。
辛い子供時代を送った人ほど、その後の人生も辛い。やりきれない結果ではあります。(そういえば以前、犯罪者の幼少期に、虐待や過度のスパルタ教育が多いことについて書きました)。
子供への暴力や虐待は論外としても、災害、事故、いじめ、親族の死など、親が努力しても避けられないトラウマもあります。両親の不和などというのも、一種避けようのない災厄かも。
それでは、強いストレスを受けてしまった子供は、大きなハンデを背負って生きていくしかないのか。
著者は、親がきちんと向き合い関わることで、子供を逆境の影響から助けることができると述べています。
詳しくは次回に。
アメリカでも、以前は子供が将来成功するかどうかは知性(または知識量)で決まると考えられてきました。しかし子供たちの追跡調査をすると、学力があっても伸びない子供や、最初はさほどでもないのに、あとで伸びる子供が出てきます。
様々な調査で、子供たちの人生を決めているのは、ある時点の知識量ではなく、数字に表れない心理的な特質・性格である、ということがわかってきました。
どんな性質が子供に必要なのか、どのように育てればいいのか、それがこの本のテーマです。
その中で気になった、子供時代の影響の話を紹介します。
■子供の頃の逆境が、健康に影響する
1995年、カリフォルニアの保険団体が、健康診断を受けた人に、子供時代について尋ねるアンケートを行いました。子供時代の「暴力、性的虐待、身体的・感情的ネグレクト、両親の離婚・家族に依存症がいる…」など10項目で、当てはまるものに印をつけて、ポイント化するという調査。
そのポイントと、現在の健康状態を比べると、
子供の頃に辛い環境にいた人ほど、健康状態が悪い、
というはっきりした相関関係が出たそうです。具体的には、逆境度が4点以上の人は、0点の人と比べて
・喫煙率と、がん、心臓病、肝臓病の割合が2倍
・肺気腫、気管支炎の割合が4倍
・アルコール依存が7倍
影響は自殺の数にまで及んでいて、6点を超えると自殺未遂の経験が30倍だったそうです。すでに自殺してしまった人は回答できないので、自殺者を入れたらもっと増えるかもしれません。
■子供時代のストレスは、学習能力にも悪影響
カリフォルニアの実験を知った、サンフランシスコの医師は、先ほどの逆境調査を参考に、学習や行動への影響を見ました。
・逆境度が0点で、学習・行動の問題が見られる子供は 3%
・逆境度が4点以上では学習・行動の問題が見られる子供が 51%
例えるなら、クラスの中でたった一人と、クラスの半分。恐ろしいほどの差です。
ストレスの多い環境で育った子供は、集中したり、じっと座っていたり、教師の指示に従うのが難しかったとのこと。強いストレスが、前頭前野の働きを阻害するものと考えられています。
コーネル大学の研究者は、子供のワーキングメモリ(一時記憶)と、ストレスとの関係を調査しました。
ワーキングメモリとは、作業中の手順を覚えていたり、計算をする間に桁上りを覚えていたりするのに使う短期記憶能力。学習や仕事で重要な働きをします。
そして、やはりストレスが高い環境の子供ほど、ワーキングメモリ(一時記憶)の機能が低いという結果でした。
著者は、こうした脳の変化は、ストレスホルモンが及ぼす悪影響によるものではないかと考えています(神経細胞が、強すぎる反応に耐えられず死滅するという説もあります)。
■以下、感想
著者は、子供を将来の成功へ導く第一歩は、幼少期に極端なストレスから守ることである、と結論づけています。
辛い子供時代を送った人ほど、その後の人生も辛い。やりきれない結果ではあります。(そういえば以前、犯罪者の幼少期に、虐待や過度のスパルタ教育が多いことについて書きました)。
子供への暴力や虐待は論外としても、災害、事故、いじめ、親族の死など、親が努力しても避けられないトラウマもあります。両親の不和などというのも、一種避けようのない災厄かも。
それでは、強いストレスを受けてしまった子供は、大きなハンデを背負って生きていくしかないのか。
著者は、親がきちんと向き合い関わることで、子供を逆境の影響から助けることができると述べています。
詳しくは次回に。
2014年8月17日日曜日
佐世保の高一殺害事件 … モンテッソーリ教育「正常化」の視点から
前回、佐世保の高一殺害事件について「習い事や勉強で隙間のない生活が、少女を歪めたのではないか」と書きました。その後で、これをモンテッソーリ教育の観点から見ることもできそうだなあ、と気づいたので、補足します。
モンテッソーリは、こんな言葉を残しています。
「幼いころに心を踏みにじられた人は、大きくなってから必ず復讐します」
それでは、モンテッソーリのいう心を踏みにじる好意とは何なのでしょうか。
■モンテッソーリの人間観
このブログで何度も書いてきましたが、モンテッソーリは子供の問題のほとんど全てが、逸脱発達によるものと言っています。乱暴も、落ち着きが無いのも、気が弱いのも、すべては「本来あるべき姿を発揮できないことによる」と。
人格は手によって作られます。したがって、問題行動をする子供も、手を使う作業に集中することで逸脱が鎮められ、正常化するというのが、モンテッソーリの考えです。
脳科学的には、集中して試行錯誤することで、意思や自制心を司る前頭前皮質、眼窩前頭皮質が鍛えられるのだと思われます。(「モンテッソーリの言う正常化を脳から考えてみる」)。
正常化への集中は、
①子供が自分で選んだことに自由に取りかかること
②やり始めたことに続けて取り組むこと
③そのことに全力を傾けること(集中現象)
④以上の過程を通って、満足した表情で自分からやめること
という過程をたどります。
しかしこの過程、親が干渉し過ぎると、うまく辿れないことが多いのです。
■つい親がやってしまう、過干渉
① 親は、計算とかピアノとか「意味のある行動」をさせたいので、「あれをしなさい、これをしなさい」と言いがち。子供が自分で選ぶ機会を奪ってしまうことがあります。
② 子供は満足するまで繰り返し、やりきったと感じたいのに、親はどんどん新しいことをさせようとします。「いつまで同じことをやってるの」と、急かすと、満足するまで繰り返せません。
③子供は全力を傾けて集中したいのに、一挙手一投足を指示したり、うまいとか下手とか評価すると、じっくり集中できません。
おそらくは、習い事でぎっしりの生活から生まれた今回の事件。
モンテッソーリの視点からは、正常化の機会を失った未熟な人格が原因になった可能性を指摘できそうです。
速く成長させたいという親の本能が、子供の成長を妨げるのは、皮肉なことですが…。
■成長のための時間を
習い事は、子供にとって新しい世界を開くもの。人生を変えるような出会いがあるかもしれません。しかしあまりにも時間を使いすぎると、正常な発達をするための機会を奪ってしまう可能性があります。つめ込まれ、指図され続ける環境では、意志も自制心も育たないのです。
とくに、敏感期の影響力が強い6歳くらいまでは注意すべきでしょう。
子供の成長には、教えられる時間だけではなく、自分で自分を育てる時間が必要です。
常に親の目が行き届くところにいる現代の子供には、意図的に集中の時間を持たせてやる必要がありそうです。
モンテッソーリは、こんな言葉を残しています。
「幼いころに心を踏みにじられた人は、大きくなってから必ず復讐します」
それでは、モンテッソーリのいう心を踏みにじる好意とは何なのでしょうか。
■モンテッソーリの人間観
このブログで何度も書いてきましたが、モンテッソーリは子供の問題のほとんど全てが、逸脱発達によるものと言っています。乱暴も、落ち着きが無いのも、気が弱いのも、すべては「本来あるべき姿を発揮できないことによる」と。
人格は手によって作られます。したがって、問題行動をする子供も、手を使う作業に集中することで逸脱が鎮められ、正常化するというのが、モンテッソーリの考えです。
脳科学的には、集中して試行錯誤することで、意思や自制心を司る前頭前皮質、眼窩前頭皮質が鍛えられるのだと思われます。(「モンテッソーリの言う正常化を脳から考えてみる」)。
正常化への集中は、
①子供が自分で選んだことに自由に取りかかること
②やり始めたことに続けて取り組むこと
③そのことに全力を傾けること(集中現象)
④以上の過程を通って、満足した表情で自分からやめること
という過程をたどります。
しかしこの過程、親が干渉し過ぎると、うまく辿れないことが多いのです。
■つい親がやってしまう、過干渉
① 親は、計算とかピアノとか「意味のある行動」をさせたいので、「あれをしなさい、これをしなさい」と言いがち。子供が自分で選ぶ機会を奪ってしまうことがあります。
② 子供は満足するまで繰り返し、やりきったと感じたいのに、親はどんどん新しいことをさせようとします。「いつまで同じことをやってるの」と、急かすと、満足するまで繰り返せません。
③子供は全力を傾けて集中したいのに、一挙手一投足を指示したり、うまいとか下手とか評価すると、じっくり集中できません。
おそらくは、習い事でぎっしりの生活から生まれた今回の事件。
モンテッソーリの視点からは、正常化の機会を失った未熟な人格が原因になった可能性を指摘できそうです。
速く成長させたいという親の本能が、子供の成長を妨げるのは、皮肉なことですが…。
■成長のための時間を
習い事は、子供にとって新しい世界を開くもの。人生を変えるような出会いがあるかもしれません。しかしあまりにも時間を使いすぎると、正常な発達をするための機会を奪ってしまう可能性があります。つめ込まれ、指図され続ける環境では、意志も自制心も育たないのです。
とくに、敏感期の影響力が強い6歳くらいまでは注意すべきでしょう。
子供の成長には、教えられる時間だけではなく、自分で自分を育てる時間が必要です。
常に親の目が行き届くところにいる現代の子供には、意図的に集中の時間を持たせてやる必要がありそうです。
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