昔話に、見越し入道という妖怪の話があります。
山道などで、道を塞ぐように現れる巨大な妖怪だそうです。旅人がその巨大さに姿を見上げると、ますます大きくなります。
ところが旅人が、見越し入道の足の方を見ると、どんどん小さくなっていくそうです。見えないほど小さくなったところで、
「見越し入道、見越した!」
と声をかけると消えてしまうとのこと。
見る人の見方によって、大きさが変わってしまう妖怪です。
■外から決めたとおりになる、レイベリング理論
以前にも書きましたが、心理学の有名な実験があります。
学校の先生に、担任する子供たち数人について、
「最先端の心理テストで、彼らには高い潜在能力があることがわかった」
と伝えます。
名前の挙がった子供たちの中には、さほど成績の良くない子供も混じっていましたが、数ヶ月後には全員が優秀な成績を修めるようになりました。
この実験。実は、教師の評価がどのように子供の成績に影響するかを調べるための実験でした。名前の挙がった子供たちがテストで選ばれたというのはウソで、本当はランダムに選ばれただけだったのです。
教師が「この子には能力がある」と思い込んだことによって、子供たちはより高い成績を発揮しました。
外から貼り付けられただけの評価が、中身を変えてしまう。そのように、評価によって本質が変わってしまうことを、瓶に貼り付けられたラベルに例えて「レイベリング理論」と言います。
■なぜ、外からの評価で能力が変わる?
この実験の結果は、次のように解釈されています。
先生が教えることを、生徒が理解できなかった場合。
もし先生が「この子はできない子だ」と思っていたら、「わからなくて当然」ということで、流してしまうでしょう。
しかし先生は「この子には高い潜在能力がある」と聞いているので、
「わからないということは、教え方に問題があるのかも」
と考えます。その結果、より熱心に工夫して教えるので、生徒は実際に理解し、成績を伸ばすのです。
生徒が教師の熱意にのせられる部分もあるでしょう。「ダメなやつ」と考える教師よりも、「できるはずだ」と信じてくれる教師の言葉を聞きたくなるはずですから。
■信じるコツ
見越し入道と同じで、見上げるほど大きくなり、見下げると小さくなるのが子供。そして、一番子供を見ているのは親。
といって、実際に子供ができない時に「この子は優秀」と信じるのは難しいですね。自分に対してウソをつくことになります。そこで、「優秀」と信じるのは難しいとしても、
「何かの条件で、本当の力が出せていないのでは?」
と考えることができれば、先ほどの教師たちと同じように、子供を伸ばしてやれるかもしれません。
ちなみにレイベリング理論に従えば、子供に
「かわいいなあ~」
と言ってると、可愛くなるはず。ウチがそうです。可愛いです。
こんな私を、妻は「バカ親!」と言います。
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