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2012年9月7日金曜日

口から入るものと同じくらい、耳から入るものは重要です

 入浴中、人形を風呂の縁に立たせて、娘が言いました。
「せんぱいの人が、こうはいの人を、川にとびこませた事件があったよねえ」
「あったね」
 娘は人形の背中に手を添え、
「早くとびこめとは言ったけど、なぐるぞとは言ってない…」
 とつぶやくように言いつつ、人形を風呂にドポーン。

 ニュース番組の流しっぱなしはやめようと決意した瞬間です。


 私たちは、子供の口から入るものには気を使っています。甘いものとか、添加物とか、放射線とか(うちは福島県産の米を食べてますけど)。
 では、子供の耳から入るものにはどのくらい気を使っているでしょうか?
 
 テレビから、本から、周りの人から。
 食べるものが身体を作るように、目や耳から入るものは心を作ります。とくに、大好きな親の言葉はストレートに子供の心に入るはず。

 心理学には「自己成就予言」という言葉があります。人間は、自分の言葉や、自分自身に対するイメージ通りに行動してしまうという説です。
 れっきとした実験的根拠のある説ですよ。本当に。


 評価やイメージが現実を動かすという説は心理学ではポピュラーなものです。
 個人的には「認知的不協和」が関わっているのではないかと考えています。大ざっぱに言うと「人間は矛盾が嫌い」という性質です。


 「俺はダメな奴だ」という自己イメージを持っている人は、怠けたり、逃げたりとダメな人らしく行動するほうがイメージと行動が矛盾しません。逆に、頑張るのはイメージと矛盾してしまうので大きな努力が必要。そういう行動をとっているうち、本当にダメな人になる可能性があります。
 同様に、自分は不良だと思っている人は、自分は善良だと思っている人より犯罪的行動に抵抗を感じないはず。
 こうして、イメージが現実化してしまうというメカニズムです。

「バカ!」
「あんたはいつも遅い」
「どうせできないんだからやめなさい」
 これ全部、街で歩いているときに聞いた言葉です。これが心の奥底に沈んで「バカ」で、「いつも遅くて」「どうせできない」自分、というイメージを作り上げるとしたら…。

 昔は、あえて罵倒して発憤させようとするやり方がありました。しかし有害であることが判明している以上、もう消えるべき方法です。

 とはいえ、子供の問題を指摘する必要がある場合もあるわけで。
 「フィンランド式キッズスキル」(ベン・ファーマン 佐俣有佳子訳 ダイヤモンド社)という本では、
「君は○○が出来ない」
 という代わりに、
「○○が出来るようにしよう」
 という言い換えを紹介していました。これ、子どもに要求したいことは同じなのですが、イメージが全然違いますよね。片方は文字通り「お前は出来ない」ですが、もう一方は「いずれできるようになる」という意味が含まれています。子どもに与える影響も違ってくるでしょう。

「あんたは片づけられない」
 ではなく
「片づけるようになってほしい」

「好き嫌いが多い」
 ではなく、
「食べられるものを増やそう」

 ちょっとした違いですが、すべて心をつくると思えば、気をつけても損はしないと思うのです。

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