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2014年7月5日土曜日

「脳は三歳までに作られる」は、間違い

「人間の脳は、三歳までに90%作られる」
 という話を聞いたことはありませんか?
 だから、三歳までに多くのことを教えるのがいい、というのが、いわゆる超早期教育の考え方です。


 実はこの説、数十年前の古い学説です。
 たしかに、脳細胞のつながりが活発なのは、三歳頃までです。昔は脳の回路がつながれば「完成」だと考えられていたので、この時期に脳が完成すると言われていたのです。

 しかし現代では「神経回路がつながる = 脳の完成」ではないことがわかってきました。つながりの数よりも、いかに整理するかの方が重要だということになっています。


■神経を道に例えると
 脳の回路は、つながった当初は、細くて不安定です。
 例えるなら、野生動物が通った、獣道のようなもの。人間が一人歩くのがやっとで、車などはとても通れません。しかも、獣道は適当にできあがるので、あっちにもこっちにもごちゃごちゃ通っていて、迷いやすい状態です。

 そこで、道を整理し、効率化します。
 通りやすく、距離が近く、便利な町と町を結ぶ道を中心に整備すれば、獣道とは比べ物にならない速さで、大量のものが運べるようになりますね。

 神経の回路も獣道と同じで、使う神経を強化、使わない回路を廃止して、効率的な神経回路が作られます。さらに神経細胞がミエリン鞘というものに覆われて高速道路にまで発展。
 この選別と強化によって、脳が完成すると考えるのが、現代脳科学。

 たしかに、神経のつながり数は、大人よりも三歳の子供の方が多いです。しかし、無駄なつながりの多い子供の脳よりも、整理された大人の脳の方がはるかに高性能です。

 脳の本格的な成長は、三歳で終わったりしません。脳の柔らかさが必要と言われる英語の発音、絶対音感などにしても、臨界期は十歳くらい。

 また、脳の発達は全体が同時に進むわけではなく「古い脳」から「新しい脳」へと向かいます。人格の脳として有名な前頭葉は、十代から二十代で盛んに発達することがわかっています。


■急ぐよりも大事なこと
 そう考えると、三歳までにいろんな知識を詰め込む必要はない事がわかります。

 発達は古い脳から新しい脳へと向かいますので、急ぐあまり机に座らせて勉強させていると、その時期に発達すべき脳を育てそこねるモンテッソーリ教育で言えば、敏感期を逃してしまう)可能性も。むしろ、三歳までは古い脳をしっかり育てておくほうがいいのです。

 不要な先取りをするよりも、その時期に必要なことを、しっかり押さえておきたいものです。

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