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2014年7月9日水曜日

英語の超早期教育は有効か

 前回、脳の発達が三歳までというのは迷信で、知識を入れるのを急ぐ必要はないという話をしました。


 それでも急いで教えたくなるもののひとつに、英語がありますね。とくに日本人は成長するとLとR、BとVの発音がわからなくなるので、幼いうちにCDやDVDで教育しようとしたりするものですが…。


 ここで、ショッキングなお知らせがあります。
 幼児は、CD、DVDでは言葉を覚えないのです。


■言葉は、聞いても覚えない
 「間違いだらけの子育て」という本があります。いろんな子育ての方法論が、どんな結果を生むか、実験と統計を中心に書いた、面白い本です。その中に、幼児がどのように言葉を覚えるのか検証した結果がありました。


 以前は、たくさんの言葉を聞いた子供のほうが、早く言葉を覚えると考えられていました。親がたくさんの言葉を知っているとか、たくさん話しかけているとかですね。
 ところが実際に調べてみると、聞いた言葉の数で決まるにしてはおかしい部分が沢山出てくるのです。


 例えばテレビを長く見ている子供。たくさんの言葉を聞いているのですが、言葉の発達は遅れがち。
 また第一子と、第二子以降では、あとに生まれた子供のほうが、家の中での会話が増えているので、たくさんの言葉を聞いているはず。ところが大抵の場合、言葉を覚えるのが早いのは、第一子です。


 では、何が言葉の発達に関わっているのか。
 実験の結果わかったのは、子供の出した声に、周囲が反応しているかどうかでした。


■言葉を覚える前に、会話している
 赤ちゃんが「クー」とか、「アー」とか、まだ言葉とも言えないような声を出すことがあります。この声が出た時に、親が返事をしたり、抱き上げたりする回数が多いほど、言葉を覚えるのが早かったそうです。


 赤ちゃんは自分の出した声に反応がもらえたことで、声に意味があると理解し、さらに声を出します。
 親は「アー」という単純な音よりも、「マンマ」のような言葉に近い音に、より強く反応しますよね。すると赤ちゃんも、より反応がもらえる、言葉に近い音を出すようにシフトしていきます。こうして、親と子の会話(?)を通じて、赤ちゃんは言葉を覚えていくのです。

 テレビやCDは、赤ちゃんがどんな声を出そうが、反応しません。赤ちゃんの行動と関係なく流れている音は、ただの雑音として認識されてしまいます。覚えようという動機が起きないので、言葉として覚えない、という論旨でした。

■では、英語を学ぶには?
 この本にあるのと同じ内容の実験を、NHKで見たことがあります。幼児の前で外国語の授業を行ったケースと、それを録画したものをテレビで見せたケース。
 目の前で行われた授業では単語を覚えたのに対し、テレビでは全く(驚くほど全く)、記憶していませんでした。
 テレビ、DVDでは言葉を覚えないという説は、確かなようです。

 さて。
 英語圏の子供たちが英語の発音を覚えるのは、英語っぽい音を出した時に反応を返してもらえるからです。英語の発音に反応できない日本人では、早期の英語教育は無理、ということになるのかも。
 もちろん、ネイティブの人に本格的にかまってもらえば、不可能ではないでしょうが…。


 日本人の子供が英語を学べるのは、ある程度大きくなって「これは英語という言葉だ、聞きなれないけれども、意味のある音なんだ」ということが理解できてからでしょう。早くても、幼稚園児くらいからでしょうか。

 そのためにはまず、理解するだけの日本語を覚えてから、ということになりそうですね。



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