いきなり「親業」から話はズレますが、「七つの習慣」という本に、こんなお父さんが出てきます。
「最近、息子が何を考えているか、ちっともわからないんですよ。なんせ息子は私の話をちっとも聞かないものですから」
著者のコヴィーは、
「息子さんが話を聞かないから、息子さんを理解できないんですか? 息子さんを理解するには、まず彼の話を聞かなければならないのでは?」
と言うのですが、彼は
「理解はしてるんです。理解できないのは、なぜ私の話を聞かないのかということで…」
まるで笑い話ですが、それが笑えないくらい、私達は、子供に一方的に話をすることに慣れてしまっています。
「理解するためには、相手の話を聞かなければならない」
それを方法としてまとめたのが「能動的な聞き方」です。
「能動的な聞き方」の原則は、批判や評価をせず、子供の話を徹底的に聞くこと。
例えば、子供が家に帰ってきて「塾をやめたい」と言ったとします。ここで
「なにワガママ言ってるの!」(批判)
というと「売り言葉に買い言葉」のケンカモードに入ってしまいます。ケンカになったら、勝つために適当な事でも何でもいいたくなるのが人情。これでは本当の原因を理解することが出来ません。
こうした非難だけでなく、私達が子供に向かって使う言葉は、子供の思考を止め、発言を封じてしまう言葉に満ちています。塾の例で言えば、
「そんなことを言わないで、続けるほうがためになるよ」(説得)
「今やめたら、後悔するよ」(強迫)
「参考書を買って自分で勉強するか」(提案)
なども、子供の話を打ち切り、建設的な会話ができなくなるという点では同じです。
では、親業ではどうするか。まずは子供の言ったことを確認するように
「そう、やめたくなったの」
と返します。確認するだけで、それ以上のことはせず、子供の言葉を待ちます。子供の言うことを理解した、聞く態度だ、ということを伝えて、話せる空気を作っているのです。
「うん、だって怖いんだもん」
「え、怖いことがあるの?」
「実はエレベーターで変な人が…」
(この例は「ステキなお母さんになる簡単な三つの方法」に出てくる実話エピソードをアレンジしました)
子供が思ったことを全部話せると、親は子供をほんとうに理解し、一緒に考えてやることができます。
また子供自身も、話すことで自分の考えがまとまってきます。場合によっては親が聞いているだけで、自分で解決策を見いだすこともあります。
この「能動的な聞き方」、家庭の外ではすでに使われています。それはカウンセリングの現場。
カウンセリングでは「積極的傾聴」と言われていますが、評価も助言もせず、徹底して聞くのは同じです。
人は、批判も助言もされず、理解されていると感じると、たくさん話すことができます。話すことを通じて自分自身の考えをまとめ、成長することができるのです。
カウンセリングで有効性の確認された方法を、家庭に持ち込んだのが「親業」の「能動的な聞き方」だといえます。
次回は、能動的な聞き方についての具体的な方法などを。→「能動的な聞き方のコツ」
付記
冒頭で触れましたが、名著として有名な「七つの習慣」でも、「理解してから理解される」という章で、同様の聞き方を紹介しています。
この方法が社会で広く使えると言うことを示していると言えるでしょう。
親業―子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方
完訳 7つの習慣 人格主義の回復
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